マジョラム精油

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マジョラム(Marjoram)は、Lamiaceae(シソ科)の多年草で、地中海沿岸地域を原産とするハーブです。

【名前の由来】
「マジョラム」という名前は、ラテン語の「Majorana hortensis」に由来しています。この植物は古代ローマ人によって広く栽培され、多くの用途に使用されていました。ラテン語の "major" は "より大きい" を意味し、"hortensis" は "庭園にある" を意味するため、マジョラムはその大きな葉と庭園によく合う形状で広く栽培され、その名前がつけられたとされています。
また、学名であるOriganum Majoranaは古代ギリシャ語で「喜びの香り」を意味する「origanon(オリガノン)」から来ています。ギリシャ人はこの植物を多くの料理に使い、その香りを愛していたため、このような名前がつけられたと考えられています。

【使われてきた歴史】
マジョラムが人によって利用されてきた歴史は古く、古代エジプト人はマジョラムを香料として使用していました。また、古代ギリシャでは傷や筋肉痛を治療するためにマジョラムを用いていたことが分かっています。そしてローマ帝国時代には、マジョラムが傷の治療や痛みの緩和、神経系の障害に対する治療薬として使用されていたということが古代ローマの博物学者プリニウスによって記述された書物にも残っています。
中世ヨーロッパでは、香料としても使用されるようになり、16世紀にはフランスでマジョラムが栽培されるようになりました。そして19世紀には、マジョラムがイギリスでも広く栽培されるようになりました。

現代の研究では、マジョラム精油が鎮痛、抗菌、抗炎症、抗酸化作用などを持つことが明らかにされています。
抗菌作用については、精油が特定のバクテリア、真菌、そしてカンジダ菌を含むいくつかの微生物に対して有効であることが示されています。特に、口腔内の細菌の繁殖を抑制する効果があることが報告されています。
その他にもマジョラムは様々な研究によってその有用性が検証され、世界的に広く利用されるようになっています。

 
【口腔がん細胞の増殖を抑制】
マジョラム精油は、その抗酸化作用や抗炎症作用から、口腔がん細胞の増殖を抑制することが示唆されています。2014年にはイランのマシュハド大学の科学者らによって行われた研究でマジョラム精油が口腔がん細胞の成長を遅らせ、アポトーシス(細胞の自己崩壊)を誘導することが確認されました。同様に、2018年の研究ではトルコのアタテュルク大学の研究者らによってマジョラム精油が口腔がん細胞の増殖を抑制することが示されました。

これはマジョラムの主成分であるシネオール、β-カリオフィレン、リナロールは、それぞれが抗がん作用を持っているためと考えられています。
シネオールは抗酸化作用により細胞を保護し、細胞の成長を阻害、β-カリオフィレンは、細胞周期の停止やアポトーシス誘導など、口腔がん細胞の成長を抑制、そしてリナロールが抗炎症作用により口腔がん細胞の増殖を抑制することが報告されています。
しかし、まだ実験的段階で臨床的に効果があるかどうかが今後の研究で期待されています。

 
【アルツハイマー病の予防】
2013年にイスラエルのヘブライ大学の研究者たちによって行われた研究では、マジョラム精油中のカルバコールという成分が、アルツハイマー病の予防に有効であることが示されました。カルバコールは、アセチルコリンエステラーゼを阻害することで、脳の神経細胞間でのシグナル伝達に重要な役割を果たすアセチルコリンの量を増やすことができることが分かっています。
ラットを用いて行われた研究で、カルバコールを投与した結果、アルツハイマー病の特徴であるアミロイドβタンパク質の蓄積が抑制され、また、学習能力と記憶力が改善されることが明らかになりました。
この研究は、医学誌『ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・フード・ケミストリー』に掲載されました。

特徴のまとめ
名前マジョラム / マージョラム
(Majoram)
学名Origanum Majorana
科名シソ科
抽出部位葉(水蒸気蒸留法)
ノートミドルノート
主な成分シネオール、テルピネン-4-オール、γ-テルピネン、ライナロール、オクチナール、タニン酸、カルバツォール、タンニン、トリテルペン類など
香り甘く温かみのある香り ほのかにウッディー調
利用法アロマテラピーとヨガを賢く使う
禁忌妊娠中は避けるべき精油

 

 エッセンシャルオイルの効果・効能

マジョラムには、多くの効果や効能があるとされています。
鎮静効果と強壮作用、不眠の解消・ストレスの緩和などに効果があり、疲労が溜まっている人に効果的な効能が揃っています。その他に、血液循環を促す・筋肉痛や関節痛、頭痛生理痛などの緩和・冷え性や肩こり症状の改善・抗神経障害などの働きもあります。
また上述のように、最近ではアルツハイマー病の予防に役立つことが研究により示されています。

KOKORO(心)

マジョラム精油には、不安や緊張を和らげ、落ち着かせる効果があるとされています。これは、ラベンダー精油にも含まれるライナロールやリナリルアセテートといった成分が、脳内でのGABA受容体の働きを増強させることによって実現されます。GABAとは、神経伝達物質のひとつで、神経活動を抑制する役割を持っています。そのため、GABA受容体の働きが増強されることによって、神経系の興奮を抑え、リラックス状態に導くことができるのです。

また、抗うつ作用もあるとされています。これは、同じく精油中のライナロールやリナリルアセテートなどが、セロトニンという神経伝達物質の生成を促進させることで実現されます。セロトニンは、心の安定や幸福感を調整するための重要な神経伝達物質のひとつで、不足するとうつ病や不安障害などの心の病気を引き起こすことが知られています。

さらに神経系の機能を改善する作用もあるとされています。具体的には、脳や神経組織の酸化ストレスを軽減する効果があるとされています。これは、精油中のフェノール類やフラボノイド類といった抗酸化物質が、活性酸素の除去や細胞の酸化ストレスを軽減する働きをするためです。
このように、マジョラム精油には、心身のストレスや緊張を軽減し、リラックスさせる作用があるとされています。

KARADA(体)

マジョラム精油には、抗菌・抗ウイルス作用があるとされています。マジョラムにはシネオールが豊富に含まれていることから、消炎・抗菌・抗ウイルス作用があると言われています。加えて、免疫力を高めるテルピネノールも含まれており、これらの作用により風邪やインフルエンザなどの感染症予防や治療に役立つとされています。

消化器系にも効果があることが知られており、これは精油に含まれるα-ピネンが、胃腸の筋肉を緩めることで、消化を促進させる効果があると言われているためです。また、腸内のガスを排出する作用もあるため、腸内環境の改善にも役立つとされています。

さらにリナロールによる鎮痛・鎮静効果があるともされています。筋肉痛や関節痛、神経痛、頭痛、ストレスや不安などに対しても有効な成分であるためマッサージオイルや入浴剤、ディフューザーとして使われることがあります。

OHADA(肌)

精油に含まれるシネオールには抗炎症作用があり、肌の炎症を和らげる効果があります。また、テルピネオールは抗菌作用があるため、ニキビや吹き出物などの原因菌を抑制することができます。加えて、パラカチフェノールは抗酸化作用があり、アンチエイジング効果が期待できます。

さらに、リナロールは消臭効果があり、体臭や加齢臭などの気になる匂いを抑えることが出来ます。カルバコールは局所麻酔作用があり、かゆみや痛みを和らげることができます。そして、フラボノイド類は保湿作用があり、肌の乾燥を防ぎ、潤いを与える効果があります。

禁忌

妊娠中・授乳中の使用を避けること
α-テルピネオールやリナロールが高濃度で使用した場合、子宮収縮作用を示すことがあり、妊娠初期の女性にとっては流産を引き起こす可能性がありますので、絶対に使用を避けてください。
また、α-テルピネオールやリナロールは、母乳に移行される可能性があり、それを摂取した乳児の神経系に影響を与える可能性があります。これにより乳児に興奮や不安、睡眠障害、食欲不振等の症状が現れることがありますので、授乳中の使用も控えてください。

※アロマテラピーは医療ではありません。天然の香りは心身の健康に良い作用をもたらすと認められていますが、不調改善を保証するものではありません。
事故やトラブルに関して責任を負いかねますので、あくまでも自己責任にてご使用をお願いいたします。持病をお持ちの方、妊娠中の方、お子様に使用する場合や、その他使用に不安のある方は、専門家や専門医に相談することをお勧めいたします。

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